2020年8月31日に第6回ジェロントロジー研究協議会が開催されました。
本研究会は、2年間の研究フェーズの最後の研究協議会となります。
当日は、新型コロナウイルス感染防止の観点から、コアメンバー・オブザーバーとその随行者、発表者のみの出席で実施いたしました。

議事は、まず寺島座長から、2年間の研究フェーズの総括がありました。
総括のポイントは以下の通りです。

  • この2年間の活動成果の1つは、分科会等で若手の様々な研究者たちが参画して、ジェロントロジーに対する問題意識を共有できたこと。積極的にフィールドワークに出て、都市郊外型の高齢化社会が現実にどうなっているのかというファクトファインディングをかなりのレベルで深めることができた。
  • もう1つが、ただの高齢化社会が課題ではないことに気が付き始めたこと。我々は高齢者人口を対象にしてきたが、今回のコロナを通じて、日本社会全体の格差と貧困の進行が、高齢者予備軍と言われる40歳代から60歳に差しかかっていく人の置かれている状況を非常に不安定なものにしている。
  • コロナによってあぶり出されたことは世代間ギャップである。エッセンシャルワーカーと言われる、現場で体張って支えてくれている若くて比較的所得の階層の低い人たちにコロナのリスクが一番高いという意味で逆進性がある。
  • 日本の基幹産業が一気に国際社会の中でメルトダウンしてきているが、生活産業、防災産業、医療産業を基幹産業にしていくぐらいの発想の転換で、日本の付加価値の創出に立ち向かわなければいけない。
  • 中間段階で問題意識をもう1回組み立て直して、本研究協議会を日本の新しい時代のためのソーシャルエンジニアリング、社会工学の研究の基点に育てていきたい。

続いて事務局より、研究フェーズを通じて明らかになった知見と、実行フェーズに向けた主な成果(プロダクト)の報告がありました。成果の1つとして、コロナ禍を受けて、オンライン+演習型として現在開発中の教育プログラム、「「知の再武装」 100歳時代のジェロントロジー総合講座」のダイジェスト版を上映しました。

【ジェロントロジー総合講座(ダイジェスト版)上映の模様】

もう1つの成果として、現在埼玉県神川町において実施している健康分野の「健食地域創成事業」について、医療・健康クラスター主査の並木幸久氏(九州大学グローバルイノベーションセンター客員教授)から発表頂きました。
これらの発表を受けて、コアメンバーから次のようなご意見・コメントがありました。

  • 健康を維持するための健食事業や美齢事業などは、コロナ禍の中でもっとPRできるのではないか。また、心のケアを考えると、宗教ジェロントロジーも重要だと思う。
  • コロナ禍を契機に、オンラインで疑似的に観光体験ができることが広がったが、高齢化を含め、技術によって色々解決できたり、新しい日本の形を作っていくことができるのではないか。まちづくりや家族の形、会社の形も多分変わっていくと思うが、そういったことを先取りした実証を行うのがよいのではないか。
  • 知の再武装の中で、テクノロジーと一緒になって、健康とか美容などのコンテンツをできるだけ易しい形で提供できる仕組みを作れれば、高齢者からかなり大きな支持が得られるのではないか。
  • コロナ禍の中で30代から40代の人たちは、家族とともに生きることが中心に動いているような感じがして、考え方をすごく変えかかっている。パラダイムシフトによって、年齢で切るという議論が果たしてどうなのか、ということを感じている。

【コアメンバー・オブザーバーとの意見交換の模様】

後半は事務局から、本ジェロントロジープロジェクトの今後として、10月以降の実行(立ち上げ)フェーズについて説明がありました。
10月以降はジェロントロジー研究協議会の事務局である(一財)日本総合研究所が研究フェーズの成果を引き継ぎ、「ジェロントロジー推進機構(予定)」を立ち上げて教育事業、会員事業、社会的事業を推進していくことを表明しました。
また、研究協議会のコアメンバー・オブザーバーの方々には、「ジェロントロジー総合講座」等の教育コンテンツの自社研修への導入やOB・OG会等への紹介の検討、社会的事業への参画・支援、今後作成する金融、NPO、健康等の教育プログラム(専門課程)の資格認定オーソライズ等により、引き続き本ジェロントロジープロジェクトに参画頂きたい旨、説明がありました。

現在日本総合研究所が「ジェロントロジー推進機構」の設立とホームページの作成、「ジェロントロジー総合講座」の配信(当面無料)を準備中であり、設立されましたら本研究協議会ホームページでもアナウンスする予定です。

ジェロントロジープロジェクトの新たなフェーズにご期待ください!